教育制度
連邦国家であるオーストラリアでは、教育制度は州ごとに異なっています。
NSW Department of Education
(略称DEC / NSW州教育・地域社会省)
公立学校とそのほかの義務教育全般を担当し、その下部組織である地方事務所が教育行政を担っています。
NSW Education Standards Authority
(略称NESA ) – 旧称BOSTES
私立学校、教育カリキュラム、義務教育修了証明書(Record of School Achievement、略称RoSA)高等学校卒業認定試験(Higher School Certificate Examination、略称HSC)を担当しています。
NSW州の大学入学まで
就学前教育、準備教育
キンダーガーテン、通称キンディ
=幼稚園、保育園
Kindergarten
初等教育
プライマリースクール
=小学校
Year 1 ~ 6
中等教育
ハイスクール
=中学、高校
Year 7 ~ 12
就学年齢
基本的な就学年齢についてだが、プライマリー・スクールへは、その年の7月31日までに6歳になる子どもが、同年に始まるイヤー1に入学することになっています。またその1年前に、プライマリー・スありませんが、ほとんどの子どもが通います。オーストラリアでは保護者が入学時期を決めることも可能で、子どもの状態によって、早めたり遅らせたりすることができる
学年の呼び名
日本のように学年が小学校、中学校、高等学校で区切られておらず、初等教育のイヤー(Year)1から中等教育のイヤー12までの12年間を通して「イヤーOO」という呼び方をしています。義務教育期間は、イヤー1からイヤー10まです。学期はタームと呼ばれ4学期制であり、新学期は1月末から始まります。
公立校と私立校
学校は公立校(パブリック・スクール)と私立校(プライベート・スクール)に大きく分かれます。
公立校は基本的には、居住区によって通う学校が決まる学区制を採用しています。公立校でも生徒のニーズや関心に合わせた学校があります。例えば、男子校、女子校、Creative and Performing Artsハイスクール、Technologyハイスクール、Sportsハイスクールなど)。プライマリー・スクールもハイ・スクールも公立校の場合、オーストラリア国籍や永住権を保持していれば学費は無料だが諸経費を含めても年間1000ドルもかからないでしょう。ビザのカテゴリーにもよりますが、テンポラリー・ビザ保持者の場合年間約5,000~6,000ドルかかります。
私立校には、男子校、女子校、宗教に基づく学校、バイリンガル教育を実施する学校、モンテッソーリ・メソッドやシュタイナー教育といった著名な教育を取り入れた学校など、さまざまな特徴があります。人気の私立校の場合、子どもが生まれた時点でウェイティング・リストに名前を載せることもあります。私立校は公立校よりも学費が一般的に高く目安としては年間約15,000~22,000ドル、その上に生徒の履修科目に応じて海外研修や遠足などの諸経費がかかります。同じ学校に同じ時期に通う兄弟がいると割引もあります。宗教の学校などは年間約4,000~5,000ドルかかるが兄弟がいて同じカトリック系の学校に通うのであれば異なる学校でも二人目から割引をしてくれる場合もあるので問い合わせてみよう。
公立校、私立校問わず、オープン・デーと呼ばれる学校見学説明会が行われます。普通は1年間に複数回開催されるので、実際に校内の雰囲気や様子を知るのに役立ちます。スケジュールは各学校によって異なるため、問い合わせて確認するのが良いでしょう。
義務教育で学ぶ内容
プライマリー・スクール (1〜6年生)
英語(English)算数(Mathematics)理科と技術(Science and Technology)創造芸術(Creative Arts)社会と環境(Human Society and its Environment、略称HSIE)心身発育と保健体育(Personal Development, Health and Physical Education、略称PDHPE)の6つです。
ハイ・スクール(7〜10年生)
10年生の修了時には義務教育修了証明書(RoSA)が交付されますが、そのためには7年生から、英語(English)数学(Mathematics)科学(Science)歴史(History)など10の科目を取らなければなりません。加えて多数の選択科目もあり農業技術(Agricultural Technology)商学(Commerce)などがあります。
OC
(オポチュニティクラス)
申し込み:小学校4年の4月から5月(学校内で案内があります) 試験:同年7月頃
「Opportunity Class(以下、OC)」とは、5年生、6年生の学力が優秀な生徒のために、知的欲求を満たす教育の場を提供するクラスです。OCに入るための試験は「Opportunity Class Placement Test」と呼ばれています。OCはすべての公立小学校に設置されているわけではないため、自分が通う小学校にない場合は、設置されている学校に転校することになります。受験資格は永住権または市民権保持者となっています。
試験判定
テストは総合で300点
テストで英語50点、算数50点、能力テスト100点=合計200点
3、4年生の成績を元に学校長より提出される内申の英語50点、算数50点=
合計100点 サンプルテストをやってみて、300点中240点取れていれば、ほぼ合格と見てよさそうです。ただし、受ける年度や志望校に寄っても違 ってきます。
OC対策法
OCテキスト用の問題集(excel出版社)で時間配分やマルチプルチョイスの答え方の練習をします
OCクラスに向いている子ってどんな子?
OCクラスには小さい頃からコーチングを受けて勉強していたり、特別な勉強をしなくても出来る子供たちもそろっています。 そういった環境に自分の子供が向いているかどうかを見極めるため、 親御さんには熟慮が必要だと思います。OCクラスに入らずに、難しい大学の学部に入学する生徒も大勢います。
セレクティブ
ハイスクール
現在シドニーには部分的にセレクティブクラスのある学校と学校全体がセレクティブハイスクールがあります。
申し込み:小学校5年の11月中旬(通学している小学校から、またはセレクティブハイスクールのウェブサイトから申し込めます) 試験:小学校6年生の3月頃
結果発表:同年7月頃
「Selective high school」は、OCと同様学力が優秀な生徒を対象に教育の場を提供する公立校です。進学志望者は、5年生の10月ごろ願書を入手し、11月半ばに提出。翌3月半ばにテストが行われ、7月に結果発表となる。OC同様、通っている私立校、公立校に関係なく受験できますが、受験資格は永住権または市民権保持者のみです。
試験判定
小学5年生の時の学校の成績(内申書)100点+当日テスト200点=合計300点満点です。
科目は英語100点(内申書50点、テスト50点) 英語は2/3が読解問題で1/3が英作文。
算数100点(内申書50点、テスト50点)、能力テスト100点です(テストのみで判定)。
試験対策
当日のテストで大切なことは時間配分です。英語、算数、能力テストはそれぞれ40分ずつですが、英語と算数は1問につき1分で、能力テストは1問につき45秒で解かなければいけません。英作文は20分です。内容はかなり高レベルで、例えば算数でしたら、日本の中学入試と同レベルの鶴亀算や仕事算、流水算などの文章題が沢山出てきます。英語の問題も読解問題の課題文がハイスクールの生徒向けのものから出ているため、かなり難しい語彙も多く知っていなければなりません。ウェブサイトのサンプルテストやマルティプルチョイスの練習はしておくように薦めています。
セレクティブでなければ希望の大学学部に入れないわけではありません
昨年2014年度の試験では募集4191人に対して13104人の申込者でした。日本の中学入試と同じで、子供たちにとってはかなり大変なことを要求しているテストですので、その精神的負担については家族のサポートが大切です。テスト勉強中に苦しそうにしていたら、少し問題の難易度を落として沢山練習をしてから、徐々に難しいものにも取り組むなどの配慮が必要です。ハイスクールの6年間、学力の高い生徒のみが常に競争している環境についていけるかというのも考慮する必要があると思います。
学力テストの種類
NAPLAN
National Assessment Program – Literacy and Numeracy
3年生、5年生、7年生、9年生の生徒を対象に毎年実施される全国評価プログラム。
読み書き能力と計算能力テスト。公立校、私立校問わず行われ、主に教師が生徒の基礎学力を測り授業の計画を立てるために行います。
ESSA
Essential Secondary Science Assessment
8年生を対象に行われる学力テスト。毎年11月末に実施。
日本語では「中等教育科学基礎学力評価」と訳されます。生徒が科学の知識をどれだけ理解し、応用できるかを評価するものです。
ICAS
International competition and Assessment for Schools
UNSW主催で世界20カ国以上で実施されている。以前は希望者のみだったが、現在が学校全体で取り組むところが多い。実施日は科目ごとに違い5月から8月くらいの間に実施、参加費が必要。Y2〜12までの生徒が受験可能。英語、数学、サイエンス、コンピュータースキル、ライティング、スペリングの6科目がありNAPLANよりもチャレンジングなテスト。
RoSA
Record of School Achievement
以前10年生修了時に受けたSchool Certificateのテストは2011年で廃止になり新しいRoSAが導入されました。11年生に進級しない生徒またはHSCを履修しない生徒には10年生修了時に、成績証明・義務教育修了証明書(RoSA)が授与されます。この証明書はHSCを受験する生徒には授与されません。
HSC
Higher School Certificate Examination
12年生卒業時に行われるNSW州の高等学校卒業認定試験( 州により異なる名称で実施)。このHSCの結果に学校の成績や評価を加味して算出される「Australian Tertiary Admission Rank(略称ATAR)」と呼ばれる評価点によって、どこの大学に進学できるかが決まります。オーストラリアの大学は、実技試験が必要なものなどを除き、基本的に大学別の入学試験は実施していません。
大学までの流れ
Year 10 / 2、3学期中に受験科目の選択
HSCの勉強は11年生から始まります。11年生をプリミナリー”Priminary"と呼びます。11年生から勉強する科目を10年生の2、3学期中に選択しHSC Courseの選択科目決定となります。
Year 11 / 1学期 プリミナリーコーススタート
Year 11 / 4学期 HSC Course スタート
11年生は3学期のみしかありません。同年4学期目は12年生の1学期になります。
Year 12 / 2、3学期にトライアル試験が各ハイスクールであります。
またUACへ志望大学名とコース名を提出します。
9月末
Year 12 / 4学期 9月末にハイスクール卒業
授業終了、卒業式
Year 12 / 10月~11月HSC試験
Year 12 / 12月中旬、HSC及びATAR結果発表。
受け入れのオファーは大学や成績によって12中にあることもあります。その他のオファーは翌年1月中旬からから2月初旬にあります。
*選択科目の決定時期やトライアルの有無は、学校によって異なるので、詳細は各学校に直接お問い合わせしてください。
NSW州と日本の大学受験との違いは?
NSW州の大学受験
学校の内申点数(50%)+HSC試験の点数(50%)
HSC統一試験の結果に学校の成績や評価を加味して算出される
「Australian Tertiary Admission Rank(略称ATAR)」の評価点によって、どこの大学に進学できるかが決まる
高校卒業、HSC試験、結果発表、大学選択の順で行う
オーストラリアはほぼ全て国立大学である。少数の私立大学やカレッジがある。
大学入学後専攻を変えたり大学を移籍したり自由
休学の費用:100~200ドル(大学による)
日本の大学受験
判定は試験の結果のみ
大学別の入学試験を実施
高校在学中に受験、結果発表、その後卒業
日本には私立大学が多く、付属校から受験無しで進学も可能
基本的に大学を辞め入学し直すしかない
年間授業料半額分など最高80万円する大学もある